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苦渋の決断をせざる得なかった武士に深い恨みを抱き続けた娘(ある江戸時代の話)


ある方より以前に教えてもらった話です。事情も知らずに、人を逆恨みすることの恐ろしさ、愚かさが解る話でした。

話自体は決して面白いものではありませんが、生と死、親子の情、恨むとは何か ‥‥ などについて、様々な思いが、心をよぎる話でした。

輪廻転生の思想にたてば、こうした怨念は、生まれ変わった後にも、(悪い意味での)影響を及ぼすそうで、登場する人物たちの魂の奥深い部分を除きこむことで、恐ろしさを感じると共に、正義とは何か、死とは何か、恨みとは何か ‥‥‥ など、様々に学ぶことが多く、私には、とても印象の強い話でした。


尚、登場した人物たちの名前の記憶は曖昧だったので、とてもアバウトな記憶で、記していますが、たぶん、違っているとは思いますが、ストーリーの記憶は間違いありません。




登場人物

小塚(kozuka)
奉行所に勤める武士

磯狩(isokari)
証拠を残さず、様々な殺人や盗みなどの悪事を重ねていた悪党

紗子(sako)
悪党の磯狩の一人娘

基輔(motosuke)
父親の死が悪党の磯狩の仕業だった気づいた若者

基輔の父親
悪党の磯狩の子分だったが、使い捨てられるように殺された

基輔の母親
息子に恨みを抱くよりも父の死を悼むことの大切さを説いた

脅された男
磯狩に持ち金を出すよう脅された男


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基輔(motosuke)の父親が川辺で水死体となって発見された。

夜に足を滑らせて川に落ちてしまったことが死因だとされた。

しかし、息子の基輔には、父親は足を滑らせて川に落ちたのではなく、悪党の磯狩に殺されたのだと直感的に解った。

基輔の父親は、悪党の磯狩の子分で、磯狩に仕えていたが、何かの事情で 用済みになったから殺された のだった。

これが悪党の磯狩のいつものやり方なので、今回も証拠などは残ってはいない。

ボロ雑巾を捨てるように、無残に殺された父親の無念を思うと、悪党の磯狩を 絶対に許せない! と基輔は思った。

若い息子の基輔は、磯狩を殺して復讐しようと、その胸中を母親に語った。

基輔の母親は復讐することに反対した。

しかし、その理由は、息子が一枚も二枚も上の磯狩に返り討ちにあうことを心配したのではなかった。

「私だって、父ちゃんが、こんな無残に殺されて悔しいよ。でも、父ちゃんは、私とお前を食べさせるため、汚い仕事だと知りながらも、悪党の磯狩の子分にまでなって働いてくれていたんだ。こんな結末になるかもしれないことを父ちゃんは、解っていたけれど、それでも、私たち家族のために、頑張ってくれていたんじゃないかと思う。だから、磯狩への恨みより、これまで頑張ってくれた父ちゃんに、感謝の気持ちを込めて、その死を見送ってやろうよ。」

そう言って、恨みよりも、死んでいった父親への感謝の念を息子に抱いて欲しいと母親は願ったのだった。

そして、弔いを終えた後、基輔と母親は遠い土地へと旅立っていった。



磯狩という男は、相当の悪党で、これまでも数多くの恐喝、盗み、人殺し ‥‥ など、証拠を残さずに、数々の悪事の限りを繰り返していた男だった。

そんな悪事の証拠を決して残さない磯狩を、ずっとマークしていた男がいた。

奉行所に勤める小塚だった。

江戸時代は 切り捨て御免 で武士が町人を切っても構わないとされていた時代だが、それは表向きのことで、確固たる証拠もなく、大根を次々と切るように、武士が町人を切ることには、リスクがあった。

それでも、磯狩は大悪党。何かあれば、切り捨てることも、世の中の正義のためには已む無しという状況だったことは間違いなかった。

しかし、小塚が悪党の磯狩を切ることを躊躇っていたのには、大きな理由 があった、

磯狩には、紗子という小さい娘がいたのだった。

悪党とはいえ、磯狩を切れば、娘の紗子が、たった一人の親を失うことになる。

そんなことになれば、娘の紗子が可哀想だと思い、これまでも、何度かあった、磯狩を切り捨てるような場面でも、ぐっと堪えて、小塚は磯狩を見逃していた。

そして、何度も何度も、小塚は何度も磯狩に、「このままだと、近いうちに、私はお前を切り捨てなくてはならない。そうなるまでに、お前の娘のためにも ‥‥ 」と言って、改心するよう説得を繰り返していた。

しかし、磯狩は、そんな小塚の説得を無視して、引き続き悪事を重ねていったのだった。

遂に、運命の日がやってきてしまった。

町外れの裏手にある誰もいない空き地で、磯狩は、ある男性からお金を脅し取ろうとしていた。

刀で脅して、持ち金を全て頂戴するという磯狩の得意のやり方だった。

しかし、その日、この脅された男は、今までの磯狩のカモとなっていた男たちとは違っていた。

刀を抜いて脅してきた磯狩に対し、金を奪われてなるものか! と、懐から小刀を出して、先制攻撃とばかりに、磯狩に切りかかったのだった。

この脅された男が慣れない小刀を必死に振り回したことと、磯狩が全くの油断をしていたことの偶然が重なって、脅された男の小刀が磯狩の左腕を切り裂いたのだった。

命に別状はなかったが、磯狩の腕からは、大量の血が吹き出した。

激昂した磯狩は、、金を奪う前に、先に、この男を殺そうと、刀を振りかざして襲いかかっていったのだった。

大声を出して叫び、逃げまどい、今まさに、男が殺されようとしている瞬間、偶然に、近くを通りかかっていた男がいた。

男の悲鳴を聞いて駆けつけてきたのは奉行所の小塚だった。

間一髪。小磯が二人の間に入って割って入り、刀を抜いて磯狩を切り捨て、間一髪で、この脅されていた男の生命を救ったのだった。

本当の戦(いくさ)こそ、長らく起こっていない江戸時代でも、何かあった時に備えて、日々、鍛錬をしていた武士の剣術は、とても鋭く、小塚が放った、ひと振りで、磯狩は致命の傷を負い、その場で息絶えた。

いつもの通り、誰も見ていない場所で、男を脅して金を奪い取るつもりだった磯狩だったが、相手の男が騒いで抵抗したため、結果として、奉行所の小塚に成敗されて命を失ってしまったのだ。

しかし、実は、この場所に、もう一人、事の次第を影から、全て見ていた人間がいた。

それは、磯狩の娘の 紗子 だった。

娘の紗子は、切られて倒れた磯狩に駆け寄り、切った小塚を睨みつけ、よくも私の父親を殺してくれたな! と言って、その瞳には、限りなく凝縮された憎しみが宿っていた。

あの状況では、他の選択肢など、有り得ないことは解っていても、小塚は、実の娘が見ている前で、(悪人とはいえ)父親の磯狩を切ってしまったことを悔やみ、娘の紗子に、申し訳ないという気持ちを、死ぬまで抱き続けていたという。

一方の、誰か遠い親戚に引き取られていった紗子は、その後も、一生、小塚のことを恨み、呪い続け、死んだ後は、今度、生まれ変わっても、(同じく生まれ変わった)小塚に出会って、復讐してやろうと、呪い続け、自分の父親が積み重ねていた悪事や、あの時、小塚が父親の磯狩を切らなければ、磯狩に、あの男が殺されていただろうことなどは、全く思うことはなく、ただただ、小塚を呪っていたという。


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以上が、ストーリーでした。

悪党の磯狩に関係する死について、恨みを封印して弔いの気持ちに変えた人間と周りが全く見えずに恨みだけを抱き続けた人間の対比など、生と死、正義と悪などについて、私にとって、色々と思いを巡らせるキッカケとなる話でした。



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シリーズ「世の中に物申す」

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私の心が揺れ動くことを微力ながらも発信しています。




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16年に及ぶ父への介護放棄と父の死後、全く供養も行わずに未だに実父の墓の場所すら知らない有名私立小学校の教師をしている兄の悪業を掲載しています。



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民法第877条違反の懸念が強い教師がいることを保護者に隠し、道徳的な指導を教師に行わないと言った有名私立小学校の校長の話です。
 
 

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唯一の被爆国である日本の戦争について様々な角度から自分の思うことを記していきたいと思います。



シリーズ 心の偏差値

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頭デッカチ、頭がいくら良くても、本当に大切なのは心の豊かさ、その思いを綴っております。



シリーズ 音楽の素晴らしさ

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音楽の素晴らしさを私の拙い文章でどこま表現できるかわかりませんが、記していきたいと思います。



シリーズ 世界が実力を認めたピアニスト 川上敦子さん

http://blog.goo.ne.jp/pizzica0912/e/ab144349ca849a6e6f7e8514a704a86e
大成功のカーネギーホールのリサイタルと同じ演奏を聴きました!
既にシリーズ掲載を完了している 伝説のピアニスト 川上敦子さん(全25話)の続編にあたります。



シリーズ 日本を思う

http://blog.goo.ne.jp/pizzica0912/e/405be3999114db53c15c40c8f9074e75
私が生まれ育った日本。 この日本を思う心を綴っていきたいと思います。



シリーズ 歴史あれこれ

http://blog.goo.ne.jp/pizzica0912/e/2e5b20b732b5089016301b0f7c860a53
学校の授業で教わる歴史とは違った切り口で、歴史の話を伝えていければ ‥‥ と思っています。
ランダムで古今東西の話が飛び出してくると思いますので、ご了承下さい。



シリーズ DIY 自分で作ったり修理したりする

http://blog.goo.ne.jp/pizzica0912/e/4234d39dbee719b1c82d8ec942361b29
下手ですが、私の趣味のDIY関係を載せていきます。(写真は自作した立水栓です)




シリーズ 遠き日の思い出

http://blog.goo.ne.jp/pizzica0912/e/1fd8827372937ffcaeff5020c130d363
発掘された小学校三年生(1975年)の日記や写真を中心に子供の頃の楽しかった想い出を振り返ります。
(馬が子供の頃より大好きだった私がポニーに乗っている写真です)



シリーズ 美味しいものシリーズ

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私が巡り遭えた美味しいものを載せていきます。




シリーズ 認知症の父の自宅介護

http://blog.goo.ne.jp/pizzica0912/e/357b83df4b2f1613c2fa5e366d6d96e3
育ててくれた親が病気になれば、介護をするのは人として当たり前のことです。(写真は大昔に父が箱根へ連れていってくれた時の写真です)
そんな父への介護のピークは、どの施設からも(病状が酷く)受け入れを断られ、2002年~2011年までの間に朝5時~夜中の2時まで毎日続けた自宅介護でした。



Facebookのダイジェスト

http://blog.goo.ne.jp/pizzica0912/e/b3416c4cddea8f8ef7dd0788fcd1aa47
私がFacebookで掲載している記事をダイジェストで載せています。




--- フォトチャンネル ---


様々な写真集を掲載したフォトチャンネルへの入口のURLとなります。
http://blog.goo.ne.jp/pizzica0912/e/c9ced1117c86eb51aea4177123b57118




--- 既に掲載完了済み ---



伝説のピアニスト 川上敦子さん (全25話)
http://blog.goo.ne.jp/pizzica0912/e/425e60748dfa331bec8b445953003a7a

演奏不可能と言われたリストの超絶技巧練習曲(1837年版)を日本で初演したピアニスト
川上敦子さんのことを掲載したシリーズです。
最終話:2015年3月11日掲載  川上敦子さんから頂戴したお心




祖母の思い出 (全第14話 最終話を掲載)
http://blog.goo.ne.jp/pizzica0912/e/4816511909af978673200140e1fbc228

4人の祖父母の中で唯一、長い交流のあった私が32歳の時に他界した祖母の思い出を記したシリーズとなります。
最終話:2015年6月10日掲載  多くの教えと思い出をありがとう。(シリーズ最終話)




重度の介護が必要だた父の緊急入院から納骨まで (全21話)
http://blog.goo.ne.jp/pizzica0912/e/c203e74471097ecc448cff62eae56542

重度の介護状態で自宅介護を受けていた父が緊急入院して他界してしまった話を記したものです。
最終話:2014年11月29日掲載  認知症でも、まだ手が動かせていた頃の父が描いた絵





愛犬パークの15年の生涯 (全18話)
http://blog.goo.ne.jp/pizzica0912/e/a8ccdc94c043ada8644af3606c3c34a5

保健所で殺処分されるところを助けられた生命。我が家に様々な想い出を残してくれた愛犬パークの15年の生涯を綴ります。
最新話:2015年11月30日掲載  母の腕の中で静かに天国へ旅立って逝ったパーク



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2016/7/14 22:00:24

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